【一時記憶、短期記憶、長期記憶】勉強で実力をつけるためには、脳のしくみ、記憶のメカニズムの理解が重要

「覚える」、という言葉。言葉にするとこの一言ですが、脳にとって「覚える」には3つのパターンがあります。

脳は、覚えたり、忘れたりするものです。勉強したことはずっと覚えていたいところですが、忘れてしまうものも多々あります。

「勉強したのになぜ忘れてしまうの?」
「覚えているものと忘れてしまうものの差は何?」

それには、記憶の種類が大きく関係してきます。

脳は、必要のないものは忘れ、必要なものだけを覚えようとします。全てを覚えることは、脳にとってものすごい負担となりますから、取捨選択して、どうでもいい情報は消してしまうんです。

そのしくみの一つが、記憶の3パターン。記憶には、3つの種類があります。

「記憶」には3種類ある

記憶には、一時記憶、短期記憶、長期記憶という、3つ種類のがあります。

一時記憶

その名のとおり、一時的な記憶です。保持時間はおよそ20秒。たった20秒だけの記憶です。一時記憶は、長くても数分しか持ちません。

例えば、暗算。数字を見て、頭の中で計算します。そして答えを出し、回答欄に書き込みます。

このとき、問題文や出てきた数字、計算式、出た答えというのは、一時的に覚えています。暗算するためには一時的に数字を覚えなければできませんし、頭で出てきた数字を回答欄に書く際にも、数字を覚えていないと書けません。

なので、そのときは頭の中にはあるんですが、次の問題に行くと、もう忘れています。前の問題の答えは~なんてのを覚えている人はいないでしょう。一時的には記憶していますが、すぐに忘れるものです。

一時記憶は、無意識にしている一瞬の記憶。ほとんどが忘れます。

しかし、全ての記憶は、まず一時記憶から始まります。一時記憶を経ても忘れなかったものが、短期記憶になります。

短期記憶

一時記憶を過ぎてもまだ覚えているもの、それが短期記憶。一時記憶の次の段階です。保持期間は、数十秒から数十分とされていますが、おおよそ20分です。

短期記憶の例としては・・・外でご飯を食べたとき。お店を出てからも、自分は何を注文して、何を食べたかは大体覚えているでしょう。

この記憶は、一時記憶よりもちょっと長持ちしています。「さっき注文したのがまだ出てこないんだけど」といったときも同じです。注文したものを覚えているんです。

でも、次の日になると、急に思い出しにくくなります。て言うか、忘れます。

短期記憶にはなったけど、脳が、それは定着する必要のない情報だとして、忘れさせてしまうのです。

一時記憶よりは、保持時間は長いですよね。でも、数十分で忘れます。

長期記憶

短期記憶よりも長く覚えているもの、それが長期記憶です。記憶時間は、ずっと。自分の家の住所や電話番号は、ずっと覚えていますよね。

勉強して「覚える」ということは、ここに達しなければ意味がありません。勉強するときは、いかにして長期記憶に持っていくか、が重要です。

一時や短期記憶の状態で「覚えたつもり」になっていると、その後で忘れてしまい、本番で全く出てこなかった、ということになります。

勉強して成果を出すためには、長期記憶としてどれだけ覚えられるか、が重要です。

記憶にはこれだけの違いがあるということを認識した上で、勉強方法を考えましょう。

短期と長期の境目を利用する

一時や短期記憶にいくら詰め込んだところで、それが長期記憶にならなければ何の意味もありません。

しかし、脳に入ってくる情報は、全て一時記憶からスタートします。長期で覚えようとしたから長期で覚えられる、という訳ではありません。

自分の勉強したものが、一時記憶なのか、短期記憶なのか、長期記憶なのか、一体どれになっているかは、脳に入れる段階では調べようがありません。

しかし、長期じゃない記憶は、保持期間が過ぎると忘れてしまいます。つまり、短期記憶までしか行かなかったものは、20分を過ぎると忘れてしまうのです。

ということは、勉強した内容がしっかり長期記憶まで到達したかどうかのチェックは、20分以上経ってから行うことで可能、ということです。

覚えたつもり、が一番怖い

一番怖いのは、短期記憶を長期記憶と勘違いしてしまうこと、つまり、覚えてないのに覚えたと勘違いしたまま、先に進んでしまうことです。

これはダメですよね。本人はできると思っている。でも、実際やってみると、当然できない。

できるつもり、できるはず。でも、できない。

じゃあどこができないのか。それは、やってみないと分からない。

結果として、点数を上げるために何を勉強したらいいか、自分では全く分からない、ということになります。

自分のことなのに、自分がどこまでできるか分からない状態。これは、後で苦労します。

長期記憶であることを確認するために

「さっきやったことは覚えている。けど、次の日になったら忘れた。」

よくある話ですが、これは典型的な短期記憶です。これではテストで点数が取れないのも当然です。次の日になっても覚えていなければ意味がありません。

「問題が解けなくて、答えを見てやり方を見たら解けた。けど、次の日になったらできなかった。」

これもよくある話です。その問題に対するやり方やヒントを覚えてしまっているんです。でも、後日やってみたら、解けない。

やり方やヒントが短期記憶として残っているときは解けたけど、長期記憶じゃなかったのでできなくなった、ということです。

勉強したことがどこまで脳に入ったのか、短期記憶なのか長記憶なのか、これは死活問題です。その見極めは、非常に重要です。なぜなら、本番でできるかどうかの境目ですからね。

長期と短期の境目 30分空けてからチェックする

短期なのか、それとも長期なのか。それは実際に試してみるほかありません。見極めにはどうしても時間が必要です。

が、次の日まで待たなくても、30分以上空ければ、次の日以降も覚えているかどうかのチェックができます。短期記憶は、20分でなくなりますからね。

ただ、20分ギリギリだと、短期なのか長期なのかハッキリしないゾーンなので、筆者は30分以上経ってからにしています。

そしてなるべく、勉強した内容を忘れるために、その30分の間は他のことを考えます。

やったことを忘れようとするために、30分間、他のことを考えます。他の教科の勉強をしてもいいですし、ゲームしてもいいです。

これで覚えていたら、長期記憶です。

覚えよう覚えようと、その内容をひたすら頭で繰り返すのはNG。それでは時間を空けていることになりません。

本番では、問題が突然目の前に現れます。思ってもない問題が、出てきます。普段の勉強においても、それと同じ状況を作り出さなければ効果がありません。

問題を解く「前」に、時間を置く

筆者の場合、勉強したことを覚えているかどうか、つまり、長期記憶になっているかどうかをチェックするために、30分以上時間を空け、その後に問題を解きます。

  • 新しく勉強してまとめノートを作り、その範囲の問題を解くとき
  • 問題集をやって、間違えた問題をもう一度やるとき

このインターバルを、必ず30分以上取ります。

問題集は、教科書の確認問題、数学の計算問題や文章題、歴史などの一問一答式、全て同じ扱いです。解いて答え合わせして、間違えた問題を再度やり直すのは、30分以上空けてからです。

すぐやり直して、それが解けたとしても、それは一時記憶・短期記憶かもしれません。それで解けても、本番で解ける保証はないですよね?

「解けたつもり、できるつもり」が一番危険なんです。

長期記憶になってこそ、本番で解けるのですから。

勉強しているのに点数が取れない人は、この辺で甘えている

短期記憶の状態でもとにかく解けた方がいい、と考える人もいるでしょう。けど、それは甘えです。もちろん、時間が経てば経つほど、忘れていく可能性が高くなりますから、やり直すなら早い方が正答率は上がります。

でも、目の前の「今できた」を優先して、後日解けるかどうかわからない状態を続けたところで、最後の本番で生きるのか?信用できるのか?

答えは、NO。信用できません。

何のために勉強しているのか、それは「本番で点数を取るため」です。そのためにならないものは、どれだけやっても意味がありません。ゼロです。

難しい文章問題を途中まで完璧に解けてても、最後の最後で一つ間違えると、その問題はバツ。つまりは、0点。途中まで合ってても、たった一つ間違えただけでゼロになる、それが試験です。だから、普段から一つのミスも許されない状況でやる癖をつけておかないと、本番で点数なんて取れません。

勉強してるのに点数が取れない、積み上がらない、という人は、この辺で甘えているんです。そしてその甘えが、点数に表れているんです。

長期記憶こそが本番での実力になる

本番で点数を取るためには、長期記憶であることが絶対条件なんです。

長期記憶ではない=実力ではない、ということを認識し、短期記憶で解けてもダメだ、と考えてください。

できたつもりで本番に臨むなんてのは危険。大事な試験なら尚更です。

100の「つもり」(=中期記憶)より、1つの「できる」(=長期記憶)が大事です。

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